「ぞう」と「ターミナル」のお話
ヘルメ・ハイネの「ぞうのさんすう」という絵本をご存知でしょうか?
絵本なので短い話なのですが,要約するとこんな内容です。
『昔,あるところに,子どもの象がいました。
【医務室コラム第1回】
象は毎日山のような干草を食べ,100リットルの水を飲みました。
そして,大きなウンチを,ひとつしました。
毎年誕生日が来るたびに,象のウンチはひとつずつ増えていきました。
それが何年も続き,象は1日に50個のウンチをするようになりました。
大人になった象は,ちゃんと数を数えられるようになり,毎日,ウンチを楽しみに数えていました。
そんなある日,おかしなことがおこりました。
ウンチが49個しか出ないのです。象のウンチは毎年ひとつずつ減り始めました。
年をとった象には解りました。50年の間に,命の半分を使ったことを。
何年もたち,とうとうウンチがひとつになる年がきました。最後の1年です。
すっかり年をとった象は,それでも毎日を楽しく過ごしていました。
そして,象の計算が正しければ,明日がウンチの出る最後の日になりました。
明日,象は生きているのでしょうか?
象は不安でした。それでも翌朝,象はいつものように目覚めました。
しかし,いつまで待っても,ウンチは出ませんでした…』
象はこのあと,どうしたと思われますか?
ほとんど筋は書いてしまいましたが,文章の響きがまったく違うので,興味のある方はご一読ください。
象は,静かに,そして幸せに「老い」と「死」を認めていきます。
悲しいことに,人間には,欲や執着,妬みや不安,葛藤や恐れがあり,この象のように,静かに「老い」に向かえる人は,ごくわずかだと思います。
開設4年めに入り,本能はターミナルケアに取り組もうとしています。ターミナルの経験のない職員も多くいます。今,不安と葛藤を抱えているのは,職員の方かも知れません。
この象のように,幸せな「老い」を過ごせるよう,私たちはご支援してきました。その先にある「死」も,静かで,その人らしく迎えられるにはどうしたら良いか?私たちは,今,手探り状態の中,必死で模索しております。
そんな本能を,どうぞ見守ってください。
( 医務室 広報担当 小谷 )